断熱リフォームは「部分的に」行える?費用やメリット、注意点を解説|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2020.05.23 / 更新日 2022.04.07

断熱リフォーム

断熱リフォームは「部分的に」行える?費用やメリット、注意点を解説

断熱材の搬入

WRITER

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矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

「断熱リフォームを部分的に行えないか考えています。その際、得られる効果や費用などはどうなるのか、詳しく知りたいです。」

 
こんにちは。《断熱リフォームの匠》の矢崎です。

今回はこのような疑問にお答えしていきます。

そもそも部分的な断熱リフォームとは

断熱材の施工後

通常、断熱リフォームは天井にしても床下にしても全面で行うのが原則です。

しかし、それに対してある一定の区画だけの断熱改修を行うという方法もあります。

《断熱リフォームの匠》でも、「部分的な断熱材の取り替えを行いたい」と相談をいただくことや、実際にそういった施工を行ったケースがあります。

部分断熱を利用するメリット

部分的な断熱リフォームは

  • 生活空間が限られているので建物全体を暖かくする必要はない
  • 断熱リフォームにかかる費用をできるだけ安く抑えたい
  • 補助金を受け取るために必要最低限の断熱リフォームを行いたい

 
という方におすすめです。

新たに創設された「こどもみらい住宅支援事業」では外壁と屋根・天井で3.0立方メートル、床で1.5立方メートルといった範囲の断熱改修を行うことで補助金を受け取ることができます。

また、現在も公募をしている「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」でも条件さえ満たせば部分断熱リフォームにより補助金を受け取ることができます。

こういった補助金を活用するために、部分的な断熱リフォームを実施したいという方が過去にはおられました。

また、この形式での断熱リフォームには

  • 部分的な費用を抑えることができる
  • 一定の空間にすべてのコストをさける

といったメリットがあります。

例えば壁の断熱材をリフォームするとして、全ての壁に施工を行っていては莫大な費用がかかってしまいます。

部分的な空間の壁や床の断熱リフォームであれば、費用対効果を高めることができます。

「家にいる間はどうせこの部屋にしかいない」というケースであれば、そちらの方がより断熱リフォームの恩恵を受けることができると思われます。

断熱リフォームを部分的に実施する際の費用


通常、断熱リフォーム工事は㎡あたりの施工単価が決められています。

「施工面積×㎡あたりの単価」

多少の誤差はあるかもしれませんが、断熱リフォームにかかる費用の概算はこの公式で求めることができます。

しかし、施工範囲が限られている部分断熱リフォームでは「どれくらいの広さまではこの価格で行う」という「一式価格」での施工を行うケースもあります。

例えば《断熱リフォームの匠》が取り扱う床下の部分断熱リフォームでは

  • 6畳まで:一式110,000円(税別)
  • 12畳まで:一式220,000円(税別)

 
で取り扱っています。

細かい調整ができない場合もありますので、事前に断熱リフォームを取り扱う業者に確認をしておきましょう。

部分的な断熱リフォームの注意点


部分的な断熱リフォームを実施する際は、以下の点に十分注意する必要があります。

  1. 部分的な施工では断熱効果がないこともある
  2. 家の中の温度差が上がる可能性がある
  3. 断熱材によっては部分施工が難しい場合もある

①部分的な断熱リフォームでは効果を得られない場合もある

部分的な断熱リフォームを行う際は、断熱性能を上げたい空間が正しく断熱効果を得ることができているかをしっかりと確認する必要があります。

例えば内窓の部分断熱を行う場合は、

「家の全ての窓に内窓をつけるのは金銭的に厳しいのでリビングにだけ取り付けよう」

と考えたとします。確かにリビング1箇所の断熱性能を上げることはできますが、その際はリビングの全ての窓に内窓を設置する必要があります。

施工を行なっていない窓があると、そこから部屋の熱が逃げ出してしまい、正しい断熱効果が得られないからです。

また、「2階の洋室の部分断熱工事を行ないたい」と考えたときも、建物の構造によっては1階の床の部分断熱工事を行なわないと、正しく断熱効果が得られない場合もあります。

断熱材の本来の性能を発揮するためにも、施工範囲は事前にしっかりと確認しておく必要があります。

②部屋と部屋間の温度差に注意する必要がある

限られた空間だけの断熱性能が上がることは、実は必ずしもメリットとは言い切れません。

普段過ごしている空間とそれ以外の空間とで、かえって温度差が広がってしまう可能性があることを意味するからです。

日本では毎年温度差が原因の心疾患「ヒートショック」で毎年多数の高齢者がなくなっています。

特に洗面所やトイレは外の気温と同じくらいまで室温が低下してしまいます。

高齢者がご家族にいる家庭では電気ヒーターなどでそういった場所の室温を高くする工夫をしたほうがいいでしょう。

③そもそも部分施工が難しい場合もある

断熱材の素材・断熱リフォームを検討している部位の組み合わせによっては、そもそも部分的な断熱リフォーム自体が難しい場合もあります。

例えば繊維系の断熱材である「セルローズファイバー」を用いて天井断熱のリフォームを行う場合、その形状から部分的な施工はどうしても難しくなります。

「この断熱材で断熱リフォームを行いたい」といった考えを持っている方は、自分の理想通りの施工はそもそも実現できるのか、しっかり確認をしておきましょう。

さいごに

今回は部分的な断熱リフォームについてご紹介しました。

部分的な断熱リフォームは、全面的な施工に比べ費用を抑えることはできるでしょう。

ただし、断熱材は見た目とは裏腹に非常に細やかな施工が求められます。

施工範囲や施工箇所を策定そのものが、断熱リフォームの効果を実感できるかどうかに大きく関わっているのも事実です。

費用を抑えようとするあまり、肝心の効果を得られないようでは残念です。

いずれにしても、「ただお客様から言われたからその通りにやる」という業者ではなく、しっかりと断熱材に関する知識を持った業者に相談することをおすすめ致します。

「事情を話したら、考えていたよりも効果的で最適なプランを提案してくれた」ということもあるかも知れません。