床下断熱と床暖房の違いは?それぞれの特徴を理解しよう|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2020.06.18 / 更新日 2022.03.01

建物・暮らしの知識断熱材

床下断熱と床暖房の違いは?それぞれの特徴を理解しよう

WRITER

WRITER

矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

「床下断熱と床暖房の違いがよく分かりません。それぞれの特徴やどちらを選ぶべきかなどについて詳しく知りたいです。」

 
こんにちは。《断熱リフォームの匠》の矢崎です。

結論から言うと、まずは床下断熱の性能を確保することをおすすめします。費用対効果を上げるためには、断熱材は必要不可欠と言っていいでしょう。

そのことについて、

  • 床下断熱と床暖房の仕組み
  • それぞれのメリットとデメリット

 
などのお話しを通してご紹介していきます。

そもそも床下断熱とは?床暖房とは?

床下断熱

床下断熱

床下断熱とは1階の床から熱が逃げないようにするために床下から床の裏側に設置されている断熱材の事をいいます。床下断熱に使われる断熱材には

  • グラスウール
  • 押出法ポリスチレンフォーム
  • 現場発泡のウレタンフォーム

 
など、様々な断熱材の素材や設置方法があります。

床暖房

床暖房は、フローリングのすぐ下に設置されている床を暖めるための装置の事をいいます。床の温め方も様々で

  • 電気ヒーターで温めるタイプ
  • 温水を循環させて温めるタイプ

 
などがあります。

床下断熱のメリット・デメリット

床下断熱のメリット

床暖房と比較した時の床下断熱のメリットとして

  • 一度設置すると半永久的に効果が持続する
  • 既存の暖房機器の効きがよくなる
  • 床を剥がさずに非破壊工法での施工が行える

 
などが挙げられます。

一度設置すると半永久的に効果が持続する
暖房器具に限らず電化製品は「寿命」を考える必要があります。

それに対して断熱材は一度設置してしまえば半永久的に効果を発揮することができます(とはいえ素材や施工方法によっては断熱材が「劣化」してしまう事は起こり得ますので、それぞれの断熱材の性質を理解しておくことも大切です)。

既存の暖房機器の効きがよくなる
断熱材の役割は「断熱性能を上げること」です。

寒い日に厚手の服を着れば体温が外に放出されないようになるのと同じで、建物も性能の高い断熱材を使うことでエアコンやストーブなどで生み出した「熱」を外に逃げにくくすることができます。

床を剥がさずに非破壊工法での施工が行える
床暖房をリフォームで設置するには床を剥がしての大規模な工事が必要になります。

既存の床に重ねて設置することも可能ですがその分床が高くなってしまうデメリットがあります。

床下断熱は床を剥がさずに非破壊での施工が可能なので、床暖房に比べて設置コストを安く抑えることができます。

床下断熱のデメリット

一方床下断熱のデメリットとしては

  • 部屋が直接暖かくなるわけではない
  • 施工業者によっては本来の効力を発揮できない
  • 他の部位の断熱性能が低いと効果を実感しにくくなる

 
などが挙げられます。

部屋が直接暖かくなるわけではない
床下断熱はそのものが熱源となるわけではありません。部屋を暖かくするにはエアコンやヒーターを別に用意する必要があります。
施工業者によっては本来の効力を発揮できない
断熱材がしっかりと効果を発揮するには「正しい施工」が必要条件となります。

例えば、曲った状態で充填されたり断熱材と断熱材の間に僅かな隙間があると断熱効果が大きく減少してしまいます。

施工する業者が断熱材のそのような特徴を理解した上で工事を行なってくれるのか、見極めが大切です。

他の部位の断熱性能が低いと効果を実感しにくくなる
部屋の熱は床以外にも窓、天井、壁など、様々な場所から逃げていきます。

特に窓は部屋の熱が逃げていきやすい場所ですので、窓の断熱性能が低いとその分効果を体感しにくくなってしまいます。

床だけでなく他の部位の断熱性能もしっかりと上げておくことが理想です。

床暖房のメリット・デメリット

床暖房のメリット

床暖房のメリットとしては

  • 直接部屋を暖かくする熱源になる
  • 建物の性能に関係なく効果を発揮する

などが挙げられます。

直接部屋を暖かくする熱源になる
床暖房は、それ自体が熱源になるので床の明らかな温度の違いを感じることができます。

その分リフォーム前とリフォーム後で足元の暖かさを直接体感することができます。

建物の性能に関係なく効果を発揮する
床下断熱は「窓」や「壁」など他の部位の断熱性能も効果の実感のしやすさに影響を及ぼしてしまいます。

一方床暖房はストーブやエアコンと同様に、それ単体で「一定のパフォーマンス」を得ることができます。

床暖房のデメリット

一方床暖房のデメリットとしては

  • 設置のためのコストがかかる
  • 運用には光熱費がかかる
  • メンテナンスも必要性や万が一の修理にコストがかかる

 
といったことが考えられます。

設置のためのコストがかかる
床暖房の設置にはどうしても複雑な工事を行う必要があり、その分初期費用も床下断熱に比べてかさんでしまいがちです。

費用は設置方法や施工面積によっても異なりますが、リビング1部屋でおおよそ100万円前後の予算が必要になります。

運用にも光熱費がかかる
当然ですが床暖房の運用には光熱費がかかります。

床暖房の床の温め方は主に電気の力で温める電気ヒーター式と温水を循環させる温水式の2種類ですが、いずれも月々で8000~15000円程度の光熱費が必要になります。

メンテナンスや修理にコストがかかる
床暖房は設備機器であるため、いずれは交換が必要になります。

また、正常に使い続けるための定期的なメンテナンスや部品の交換が必要になります。もちろん断熱材も想定外の落下などによる整備が必要になる可能性は考えられますが、修理にかかるコストも床暖房の方が比較的高コストになることが想定されます。

床暖房にとっても床下断熱は必要不可欠!


今回は床下断熱と床暖房のそれぞれの特徴についてご紹介してきました。

暖房器具の効果を最大限発揮するには、影の存在である断熱材がとても重要です。

部屋で生み出された熱はどんどん部屋の外に逃げていきます。

私も床暖房が元々設置されていて、床上では床暖房を使っている状態で床下の診断を行うことがありますが、床暖房をつけている部屋の床下だけ「暖かい」と感じることがあります。これは生み出された熱が床下に流出している何よりの証拠で、エアコンをつけながら窓を開けっ放しにしているのと同じ状態で、余計な光熱費がかかっていることになります。

床暖房の性能を十分に発揮するにも、まずは床下の断熱性能を優先的に確保することが賢明です。