シロアリが好きな断熱材はどれ?調べてみた|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2018.08.29 / 更新日 2021.07.06

断熱材

シロアリが好きな断熱材はどれ?調べてみた

WRITER

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木村 健人

環境省認定うちエコ診断士

断熱事業立ち上げメンバーとして、断熱工事等の社内標準化に携わる。断熱調査、工事を経験した後、現在はウェブサイト運営を担当。

今日はちょっとした実験をやりましたのでご紹介させていただきます!題して、「シロアリが好きな断熱材はどれ?」実際にシロアリに断熱材を与えて経過観察を行い断熱材による違いを確かめてみました。

断熱材とシロアリの深い関係

断熱材は建物に無くてはならない建材のひとつ。でも使い方を誤ると取り返しのつかないことになってしまうことがあります。例えば、「結露による腐れ」は断熱材の不具合でよく目にしますよね。でもそれ以外にも、実はシロアリ被害を甚大なものにしてしまう事があるのです。

被害を受けた断熱材

お家の断熱材が壁や床の中でこんなことになっていたらショックですよね。なので、断熱材を選ぶ際にはシロアリに強い断熱材を選びたいものです。
でも実際にどれがシロアリに強いのか。調べても実際に比較したものがなかったので、試しに確認してみました。
 

調べてみた断熱材

今回使用した断熱材は、高性能グラスウール(24K)、セルローズファイバー、発泡ウレタンフォーム とそれぞれ特徴を持った断熱材を3種類用意しました。


左からセルローズ、グラスウール、発泡ウレタン

 

用意する道具

用意するものを下記にメモします。

1.「大きめタッパー」と「木材(柔らかいSPF材やアカマツがオススメ)」
スプルース材
底にエサとなる木材を設置します。シロアリにはこの木材を目指して貰います。
2.断熱材
ホームセンターで入手できます。現場発泡ウレタンフォームやセルローズファイバーは工事店でないと入手は難しいです。今回の発泡ウレタンはホームセンターで購入出来るスプレータイプを使用します。木材の上に断熱材の層を作ります。
3.土(栄養のない土壌)

これはできるだけ栄養の無いものを選びます。土がシロアリのエサにならないようにするためです。断熱材の上に1cmほどの土壌層を作ることでシロアリのコロニーが定着しやすくなります。
4.シロアリのコロニー(巣)

ヤマトシロアリ、イエシロアリのいずれかを準備します。

 

シロアリを断熱材容器に投入

今回は活性が高く今回の実験にも最適な「東京都産のヤマトシロアリコロニー」を用意しました。

ひとつあたり推定200~400頭ほどです。

こちらはセルローズファイバー断熱材ですが、シロアリが早くも土の中に道を作り始めています。

開始から3日目に変化が

発泡ウレタンフォームで真っ先に変化がおきました。スプレータイプの発泡ウレタンのため、施工後に断熱材が縮みタッパーとの間の隙間を通り道とされてしまいました。今回の実験は断熱材を「穿孔」するかを確認するもののため、隙間からの侵入は対象外です。

とはいえ、その僅かな隙間を突いてくるシロアリもさすがです。

自分たちで土を運んでトンネルを作ります。専門的には蟻道(ぎどう)といいます。

開始から6日後にセルローズファイバーで大きな変化

セルローズファイバー断熱材に大きな変化が見られました。タッパーを開けてみると、土壌表面に無数のシロアリの死骸が。突然のことに驚きましたが、実はこれセルローズファイバーに防虫性能があるためなのです。

セルローズファイバーは新聞紙から作られた断熱材です。その新聞紙はシロアリの大好物なのですが、セルローズファイバーにはホウ酸という防蟻成分が添加されており、シロアリがそれを食べることで死んでしまうのです。(※ホウ酸は触れるだけでは防蟻効力はないので食べない限り効果がありません)

この6日目からシロアリの個体数は徐々に減っていき、セルローズファイバーのコロニーは19日目で全滅することになりました。もちろん断熱材は全く貫通されることなく無事でした。

グラスウールにも変化が生じる

グラスウールもセルローズファイバー同様に6日経過あたりで変化がありました。

蟻道が作られ始めたものの、これ以降蟻道が伸びることはありませんでした。やはりガラス繊維断熱材はシロアリからすると居心地が悪いのでしょうか。それどころか、急激にコロニーが衰退してしまい、目視で確認ができるのが10匹程度にまで個体数が激減してしまいます。

このグラスウールですが、断熱材自体には防蟻性は無いため43日経過現在、数匹の個体が確認できる程度生存していますが、もちろん断熱材は貫通されていません。

 

40日経過した結果


 

・グラスウールはほぼコロニー消滅
・セルローズファイバーは19日目で全滅
・発泡ウレタンフォームは依然活発に活動

 

食害を受けた木材

発泡ウレタンの木材は食害を受けて凹んでいます。依然活発に活動しており、コロニーの衰退は全く見られません。

よく見ると、発泡ウレタン自体に穿孔して(穴を開けて)通り道が形成されています。冒頭に掲載した断熱材のシロアリ被害例と同じことが発泡ウレタンにも起こりうることが分かります。

このように実際にシロアリを使ってそれぞれの断熱材の様子を観察すると、断熱材によって全く違う結果となりました。断熱材の性質を知っている方からすると予想通りだったかもしれませんが、実際に結果として出ると、断熱材もしっかりシロアリ対策を考えて選択しなくてはなりませんね。

断熱材を何にしようかとお悩みの方は、ひとつの参考にしてみてください。